三国志/第九巻「大陸の死生観、イナゴにゆれる漢帝国、ほんとはイナゴじゃないんだけどな!」

三国志 (9) (希望コミックス (38))

8巻の最後の、第8巻の最後のページに描かれていた暗雲の正体は、
これだったんですね。

イナゴの大発生蝗害(こうがい)とも呼ばれます。

とはいえ、本当の、生物学的に正式な「イナゴ」ではなく、
実際はトノサマバッタなどの種類です。

通常、大挙して飛来したバッタは、そこでタマゴも生むので、
連続して大発生するのだそうです。

現在、アフリカを中心に起こっている蝗害(こうがい)は、
専門の機関が6週間先までの分布を把握し、
対策を練っています。

日本政府も、被害国には無償の資金援助をおこなっています。

現代では化学薬品による駆除が通常ですが、三国志の時代、
もはやこれは「天の声」にしか思えない、
最悪の事態だったでしょうね。

蝗害(こうがい)による飢餓・餓死・困窮・貧乏は、
専門兵でない、いくさの時以外は農民でもある兵士にも、
多大なる経済的・精神的損害を与えているはずです。

おおざっぱにいえば傭兵である一兵卒たちは、
たいした給金をもらっているわけでもなく、
忠誠心があるわけでもなく、
なにかきっかけがあればすぐに略奪・逃亡をする
危うい存在でもありました。

だからこそ、こんなこともかんたんに…。

金には目の色かえるだろ?

金目のものを拾う兵

帝に頼られて、これから天下に号令できる立場に
なっていくとは言え、まだ、
漢朝の臣下であることに変わりはない曹操

そこへ天文官の報告を受け、部下が曹操に諭します。

ここに、中国大陸の「人生観」「世界観」「王権観」
というものが、垣間見えます。

我々は昔から国を興しそして滅び、また国を興す
そんな歴史を繰り返してございます
我々はその時代時代に人智を尽くして生きているのでございます
しかしそれも大自然の力の前にはなす術を知りませんぬ
黄河の氾濫
イナゴの襲来
大雪
暴風
それらの前に人間の力でなにができるでございましょう
いかに人間が進歩しようと
人間は自分の運命はわかりませぬ
それを知ってるのは天だけでございましょう
大自然だけでございましょう
もし星の運行にそういう兆しがあるなら
心の底にとめておかれませ

これを聞いた曹操は、
自分の野望の火がくすぶっていることを再確認し、
のちのちのことを考えて、ふたたび遷都することを
帝に進言するのでした。

曹操、もっと大きくなる

自然の猛威が人間などはゴミのようにあしらってしまう、
というのは全世界で共通のことですが、
ことこの時代の中国大陸でのとめどもない天災は、やはり
その土地の人生観や死生観を決定づけるものなのですね。

特に「天子」と呼ばれる皇帝は、
天災すらも「徳の無さ」からくるものだという叱責を受ける
立場にあるわけで、イナゴの襲来もまた、
漢王室そのものの不徳、徳の失墜の象徴だと
捉えられたということでしょう。

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