乱れに乱れる世相、そして腐りに腐った政治を背景に、血なまぐささを増す漢朝の末期、地方の将軍でも武力を持ってすれば政治を動かせる、という既成事実がどんどん積み上がっていく。
董卓、という将軍が、中央政治を取り仕切ってしまった。
なんだか将軍がトップに立つとなるという様子を見ると、ノリエガ将軍とかカダフィ大佐とかを思い出す事案だ。
カダフィは将軍ですらないが。
パナマのノリエガもリビアのカダフィも、政治的に最後は哀れな姿になってしまうわけだが(ノリエガは存命)、董卓もいずれそうなる雰囲気がぷんぷんしていて素敵だ。
死相が出ている。
なぜなら、曹操が立ち上がらんとするから。
この時、曹操三十五歳。
人物像があまりにもあっさりと描かれているため、どれくらいの才気煥発ぶりだったのか深くは知れないが、助けてもらった恩人を結局みずから斬り殺してしまうという残忍で酷薄、しかし冷徹な計算が出来る人物だったのだろう。
俺の言うことは正しい
俺のなすことも正しい
俺が天下に背こうとも
天下の人間が
俺に背くことは許さん
そして劉備や張飛、「壮大なる逆算」の士、関羽雲長が、1コマも出て来ない第4巻。
豪傑であって人気も高い呂布、そして謎の高評価を得ている化け物ホース、赤兎。
この赤兎馬、贈られただけで呂布に養父を裏切らせるほどの魅力ある名馬なのだ。
これって、なにかの記号として使われているように感じるのだが、いったいなんなのだろう。
長大な歴史からすると、うまく曹操の噛ませ犬として台頭してきてくれた董卓。
漢朝王宮をめぐる権力争いとしての色合いが、ハッキリ強くなってきた。