Where Are We Now?

僕らは今、どの辺にいるんだろ?

読んだ本

憚りながら

投稿日:2017年1月21日 更新日:

憚りながら (宝島社文庫)

元山口組後藤組組長、後藤忠政氏のベストセラー。
武闘派として知られた「後藤組」の、得度して仏道に入った組長の、赤裸々な独白。

一人のおじさんとして、古き良き時代を知る男性として、今の日本を憂う気持ちはよくわかるし、その意見は全くもって正しい。

 

ただ、やはり引退したとは言えヤクザは今まで、散々「カタギを泣かせること」で儲けてきたわけだ。
極道はなんたらかんたらと言ったって、いくら豪邸に住んだって、カタギを泣かせてメシ食ってるのがヤクザだ。

そのシノギや酷い犯罪行為については「いろんな会社があるからわからねえ」とか「俺は知らないけどね」とか適当にごまかして、日本には男がいなくなっただの小チンピラが増えただの言われても、やはり鼻白む部分はぬぐえない。

…と思うと、この書は、「読者をそういう気分にさせる」目的も持ってるのかな、と。

 

つまり組長は、乗せられて、善意で、いろんなことを喋らされてるな、という印象なのだ。
もちろん発言の責任は本人にあるので、
「編集者め!」というようなことは思わないんだろうが、やはり、「乗せられてる」感は否めない。

ヤクザは一般社会に溶け込もうと努力してるのに、警察が、法律が、社会が、生きにくくしている、と後藤氏は主張する。

 

この論理って、そもそもおかしいんだよ。

だって、人間が、「ヤクザでいる必要」がどこにあるんだ。
生きにくく、世間の常識から外れた生き方しかできないからと言って、指定暴力団に所属しているいつまでも意味が、どこにあるんだ。

半グレや、イタリアマフィアのように「地下に潜る」方が怖いよ、という意見もよくあるけど、それはそれで「地下マフィア撲滅運動」をやればいいのであって、「だからヤクザを守ろう」という論理はおかしいだろう。

「ヤクザには人権がなくても、その家族は関係ないだろう。子供は学校にも行けないのか?」

という論理も一応は理解はできるけど、

「お前らに、ヤクザをやめて普通に働く」という選択肢はないのか?と言い返したいところだ。

家族に人権はないのか?とヤクザの方はよくおっしゃるようだが、堅気の家族の人権を蹂躙して生きているのがヤクザなんじゃないのか。

他人は「弱肉強食だから仕方がねえ」みたいな理屈で居直って、ヤクザは任侠だし伝統だし男道だから守るべき、は通らない。

 

現場のリアルな声が。

意外にすごい収穫だなぁと感じるのは、
文庫本に収録されている、東日本大震災時の、援助活動の章。

福島に救援物資を届けるために著者が活動した、細かな初動の記録が綴られている。
生の声であり、逼迫した当時の状況がよくわかる、貴重な記録だと思う。
そして民主党政権が、いかにダメだったかもよーくわかる。

 

YouTubeで鬼のようにコスられているこの動画。

再生回数www

人気あるんだよね、後藤忠政氏は。
魅力ある人物だということは、間違い無いようだ。

 

 

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