こういう表現方法で、どうしても固くなりがちな宮廷や、幕府との折衝を感情豊かに描き出すとは、という驚きに満ちています。
まるで日記を読むように、本当に当時の状況を活写しているかのように。
物語というよりは、歴史の一部分を覗き見るような感覚。
「筆硯清良、人生一楽という語もあるほどに文房品は喜びじゃ。この洮河緑石は宋代に洮河の河底から採れたそうじゃが、その後は洪水のために流路変わり、坑の位置が判らなくなってまぼろしの名石といわれている。端渓、歙州と並び賞されるもの。また明代は唐に劣り、紙は宋に及ばず、といわれるが、墨だけはいずれに勝るという。その明代一の墨匠、羅小華の作とあれば、誠に心強い。いや、よきものを献じ給うた」
硯を送った東福門院に対して、御水尾帝が漏らしたお言葉。
幕府から、たった一人公武のために涙を隠して奮闘した、和子(まさこ)の生涯。
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