温かかった“ファミリー”は、なぜ“ブラック企業”と指弾された!?
“伝説の広報”にして組織を知り尽くした男が初告白!!
吉本興業はどこへ向かうのか――?
“闇営業問題”が世間を騒がせ、「吉本興業VS芸人」の事態にまで発展した令和元年。
“芸人ファースト”を標榜するファミリーの崩壊はいつ始まったのか?
35年勤めた”伝説の広報”が芸人の秘蔵エピソードを交えながら組織を徹底的に解剖する。
笑いの世界を愛するすべての読者に贈る「私家版」吉本興業史!
契約問題や闇営業問題など、上場企業として(今は非上場)様々な問題を抱えてきたにもかかわらず、なんとなく「ファミリー」として吉本興業が看過されてきているのは、やはり「笑いの会社」だからだろう。
日頃親しくテレビで見ている人たちがいる会社であり、笑いを作る芸人がたくさん所属する会社だからこそ、「徹底的にたたけ」「潰れた方が社会のためだ」とまでは思われないのではないだろうか。
反社会勢力とのつながりがこれほどまでに明確なのに、元社員までもが「赤裸々に書けば許される。なぜならそれが吉本らしさなのだから」くらいのスタンスでいることに、本来はもっと驚かなければならない。
だけど我々は、そんなに驚かない。
「まぁ、そんなもんだよね」くらいで済ませている。
戦前〜戦時、そして戦後から快進撃を続けるエンタメ企業の、いわば「殺戮史」でもある。何を殺したか。それは「吉本以外のお笑い事務所の勃興を」である。
吉本しか勝たない。
そんな状況を、いまだに産み続けている。
こちらが「正史」。
当時の社長が記者会見で語った「ファミリー」という言葉。
売れている人たちと、売れてない大勢の芸人との間にある「大きすぎる溝」がそこには問題として横たわるのだが、元社員の著者をはじめ、その構造に関してテコ入れした方が良いのだ、と言及する人は、メディア側にはただの1人もいない。
なぜなら、「人気商売のスター性は、不人気芸人の死屍累々の上に成り立つ」という特性を知っているからである。