ある日、ブラック企業勤めのシイノトモヨ(永野芽郁)を襲った衝撃的な事件。それは、親友のイカガワマリコ(奈緒)がマンションから転落死したという報せだった――。彼女の死を受け入れられないまま茫然自失するシイノだったが、大切なダチの遺骨が毒親の手に渡ったと知り、居ても立っても居られず行動を開始。包丁を片手に単身“敵地”へと乗り込み、マリコの遺骨を奪取する。幼い頃から父親や恋人に暴力を振るわれ、人生を奪われ続けた親友に自分ができることはないのか…。シイノがたどり着いた答えは、学生時代にマリコが行きたがっていた海へと彼女の遺骨を連れていくことだった。道中で出会った男・マキオ(窪田正孝)も巻き込み、最初で最後の“二人旅”がいま、始まる。
一番驚いたのは、あんなことがあって、あそこまでの行動力を発揮したのに主人公のシイノが、元のブラック企業に戻って仕事しているということだ。
若い女性が遺骨を持って旅をする…。
その風変わりなシチュエーションを作るには、不幸せな友人の死がなければならず、二人の「二人にしかない思い出」がなければならず、主人公の、実は抱えていた思い(失って初めて自覚する)がなければならず…。
多くは、行動に移さず、哀しんで憐れんで終わってしまうような、どこかにあるような関係性、どこかにあるような話。だけど、行動に移してくれる主人公がいてくれることで、全国のどこかで、同様に「救われている」人がいるのかも知れない。
監督のタナダユキ氏の手腕が光る。
1巻完結の漫画が原作だが、テンポがいいのでどこにも拘泥せず、それでいて感情移入できて、あっさり終わることすらも、作品のテーマなのかと思わせてくれる良作だと思った。