フェルメールは日本でも大規模な展覧会が開かれるほどの人気の、オランダの画家です。
なんと、37点しかその作品は確認されていないそうで、当然、その絵は大小の美術館や、普段は公開されない個人蔵、またはエリザベス女王が持っている、などで散らばっています。
たいてい、オークション(ヤフオクじゃないですよ)で大富豪が大富豪から買う、みたいなのが絵画の常ですが、もうフェルメールくらいになると大富豪が美術館に寄贈したり、学者の働きかけで国が個人から買ったり、浮世離れしています。
そして戦時中、ヒトラーもフェルメールに興味を示していたようで、ドイツに移されたり、また戦後取り返されたり、ああ、焼いたり燃やしたり捨てたりしないインテリが独裁者で良かったね、とそこだけは感心してあげる所存であります。
ほんと、有名な作品がたくさんありますね。
真珠の首飾りの女
地理学者
真珠の耳飾りの少女
真珠の首飾りの女
この時代、宗教画や風俗画、おおまかにとらえて色んなジャンルの絵を画家は描いたようなんですが、その背景や壁などに、特にその絵の主人公と関係のない物が画中画として描かれていたり、ステンドグラスの柄になっていたりすることがあります。
そして、乱雑にテーブルの上に置いてあるモノがあったりする。
これらを「寓意」と捉え、画家が作品に込めた意志を読み取る、というのも絵画の楽しみのひとつなのですね。
近年は科学的手法による調査も進み、それを画家がどのように苦悩し、コントロールしていたかも具体的にわかる例が出て来たりしているようです。
フェルメールは最初、椅子を左の窓の前に描いていた。それを
右手に移動したときに、窓のそばの椅子の跡を塗りつぶした形
跡が見える。壁にかかっている地図も、X線写真で見ると最初は
もっと大きく描かれていたが、それは修正され、壁の白い部分
の面積が増えている。
(p.228、《窓辺で水差しを持つ女》に関して)
これらのモノに読み取れる寓意、たとえば「楽器」は「愛」を表わすとか。
「寓意図像集」なるものの存在も、初めて知りました。
想像するだに面白そうです。
その手段をとるのはただ意味を隠してあとで楽しむ、というだけではなく、画家によっては、当時の政治体制やキリスト教会に対する風刺や揶揄も含まれていたんでしょう。
でもね、いくら寓意でそっと描いてあると言っても、上に挙げた「寓意図像集」まであるんだから、そんなの、為政者が気づかないわけないですよね。それなりに有名にならないと、「寓意」としても意味なさないわけだし。
そのへんは、お目こぼしがあったと考えるのが自然なんでしょうか。「まぁ、絵だし」みたいな。
それで思い出すのが日本の歌舞伎。
江戸時代、そんな内容の演目はまかりならん、と差し止めにならないような工夫として、政治批判にならないように役名を文字っておく、ということが行なわれてました。
忠臣蔵では、大石内蔵助は大星由良助。
その妻なんて「お石」ですから、これで気づかないならバカでしょう。
設定も、赤穂事件があった元禄ではなく、室町時代になっている。
だいたい、「仮名手本忠臣蔵」が、かなのお手本である47文字から、討ち入りした赤穂の四十七士を彷彿とさせるタイトルになっている。
これで気づかないなんてことはないわけで、これもまた、お目こぼしなんでしょうね。