私が一番詳しい音楽家は、小説の主人公にもしたショパンだし、一番拘って聴き続けているのは
マイルス・デイヴィスだ。
彼とメタル談義で盛り上がったのは、それが共通の話題だったからである。(p.34)

人間には、いくつもの顔があるーーー私たちは、このことをまず肯定しよう。相手次第で、自然と様々な顔になる。
それは少しも後ろめたいことではない。
どこに行ってもオレはオレでは、面倒臭がられるだけで、コミュニケーションは成立しない。(p.36)

愛とは、「その人といるときの自分の分人が好き」という状態のことである。
つまり、前章の最後に述べた、他者を経由した自己肯定の状態である。(p.136)

ての人間関係がこれでおそらく説明がつく、小説『空白をみたしなさい』の主人公たちが「思い」として共感し、自分の生き方を肯定的に受け止めるきっかけとなった考え方。

それが「分人」。

分割できない「自分」というものを決めてしまうから、今ココにいる自分とは違う「本当の自分」を探してしまう。

今の自分をまず否定してから、どこかにいるはずの「本当の自分」に出会う旅にでてしまう。

人間は元からきちんと多面体で、その面の数は人によって違う。
どの面で誰に接するかは、決める場合もあれば自分では決められず勝手に決まることもある。

学校の自分/家庭での自分/仕事場での自分/盛り場での自分、それぞれ少しずつ違うし、変えている。

それぞれの「分人」の%をすべて足して、「自分という100%」になる。

なので、フェーダーを操るように、どの分人の%がいつのまにか減り、あの分人の%がいつのまにやら多くなってる、なんてことも起こる。

とにかく、この考え方を身につけることで、自分の生き方をヘタクソに狭めなくて済むかも知れない。

どんな人生のベテランも熟練者も、最後は「人間関係がむずかしい」と宣(のたま)うほどにややこしいコミュニケーションの綾を、この「分人」という理解で楽に過ごせる可能性が高まる。

これは、ぜひ、読んでおくべきだと思う。

ダマされたと思って(と書くと著者に失礼だが)、きちんと買って読んでみていただきたい。

人間関係に悩んでいる方、これも縁だと、きちんと買って、読んでみてね。