なんで天下のトム・クルーズが、「殺し屋」側をやってるんだ…!?
と、途中まで、首をかしげながら見ていた。
正義の、スーパーダンディをやってれば済むはずのスターが、どうしてこんな汚れ役を…
誰でもそう思うだろう。
配役、逆じゃない????ってww
でも、違った。
途中、タクシーの中で、巻き込まれたタクシードライバーのマックス(ジェイミー・フォックス)と、冷徹な殺し屋ヴィンセント(トム・クルーズ)とのやりとり(吹き替え版)。
ここ、「肝」だ。
ヴィ「…自分はどうだ」
マッ「…」 ヴィ「タクシーを小綺麗にして、夢はリムジンか?いくらたまった?」 マッ「あんたに関係ない」 ヴィ「きっといつかは夢が叶うって?そうしてある日、フと気づくのさ。夢は叶わないまま、いつの間にか歳をとった自分に」 マッ「…」 ヴィ「叶わないのは、自分が何もやろうとしなかったからだ。夢は記憶の彼方に押しやり、ひじかけ椅子に揺られ、一日中ぼんやりとテレビを見て過ごす…自分を殺してるも同然だろう。 マッ「…」 ヴィ「なぜいつまでもタクシーに乗ってる?」 マッ「…何となく流されて、ちゃんと人生を考えてなかった…」 |
ここからマックスの決意と暴走により、事態は急展開。
緊迫のクライマックスから、ラストは
「ロスの地下鉄で男が死んだって誰も気づかれないぞ…」
そうやって、謎のまま現れて謎のまま死んでいく男。
ただ、誰にも素性も知られず、ただ広大な宇宙の中で、ただなんとなく生を終える男。
なんなんだ。
必死でもがいている自分は、この世界は、一体なんなんだ。
ただ、朝まだきの人気のない電車で、ただ死んでいく男。
なんなんだ。
この物語は、この男は、一体
なんなんだ。
そう思うと同時に、なんなんだ、この世界は。
我々がフツーに生きてる、この世界って一体なんなんだ。
普段は無視しているような、わざと目をそらしているようなことをわざわざ目の前に引きずり出されてきたような、むごたらしさを感じる。
そう、もはやトムに、すべてを握られ、コントロールされているかのような感覚。
やるな、クルーズ。
さすが、クルーズ。
そういう映画。
Huluで観ました。