吉田修一原作の映画化。
豪華キャストによるドラマ展開。
これを映像化しようとすると、豪華キャストにせざるを得なくなる。
なぜなら、3つの別の物語(同時進行)に、キャストの偏り(有名無名の差)があると、おのずと、犯人が有名な俳優のいる方、だとバレてしまうから。
なので、それぞれの物語や設定が分離して成立するように、豪華な俳優陣になっている。
中でも渡辺謙・宮崎あおい・松山ケンイチのグループは、これだけで進めればなんらかのストーリーに立派になり得る、迫力ある演技になっていて、物語全体を引き締めてくれている。
で、結局はあいつが犯人だったわけだけど、どうにも解せないまま終わる。
というのも、「怒」の字を残して殺した割には、その動機とかが、なんとも曖昧な感じがするからだ。
整形までして逃げた、という警察の発表も、そこまでして全国を逃げ回るような気持ちがあるのに、最後はなんだかあっさりと、いや、単純な回顧で終わっているような気がする。
もしかしたら精神になんらかの異常がある、ということなのかもしれないが、タイトルの「怒り」は、決して犯人の持っていた「怒」ではないのではないか、というところに思いは至る。
それぞれの物語を抱えている登場人物が、なんらかの、あるいははっきりとした、でもどうしようもないような「怒り」を、発散できるかできないか、みたいな部分。
渡辺謙・宮崎あおいチームも、妻夫木聡・綾野剛チームも、森山未來・広瀬すずチームも、それぞれに、感情に静かに「怒り」を含めて、流れを見守っているという風情がある。
観客の視点では「誰が、3人のうちどいつが犯人だ??」という風に見られるけど、登場人物たちはその比較ができない。目の前にいる人間を疑い、悲しみ、苦しむだけである。
そんな「自分だけの視点」を意識してみると、意外にぼやけてしまう「怒り」というもの。
そして「謎」のまま終わる。
第40回日本アカデミー賞総ナメの力作。
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