発売になったTRICERATOPSのアルバム
『SONGS FOR THE STARLIGHT』。
シアトリカルなアプローチさえ感じるアルバムの歌詞を読んでいくと、そこには
「現代を冷静に見る心象風景」と、
「男としてのモヤモヤ」と、
「人生の大いなる肯定」が
含まれていました。
そこで、全曲に対し、「ああ、そうですよねえ」という感嘆を簡単に示しつつ、いっしょに楽曲を聴きながら、より歌詞世界を堪能できる工夫として、勝手な解説を書いて見ることにしました。
歌詞は、メロディに乗っているからこそ理解しやすく、心に届くことがあります。賛美歌しかり、般若心経しかり。
そして、メロディにしか乗せられないという制約は、それゆえに意味を倍増させることがあります。
つまりは、なにかの隠喩になっている。
たとえば「二人」という言葉が出てきたとしても、それは1対1の恋愛をはさんだ関係性だけでなく、対人関係すべてに呼応する比喩だったりするのです。
歌詞全文を掲載することは著作権上はばかられるところですので、ぜひ本作を購入していただき、歌詞カードを片手にしていただいているという前提のもと、抜粋引用しながら進めてまいりたいと思います。
「妙な解釈をするヤツもいるもんだ…」などと嘲笑しながら、軽い気持ちでごらんください。
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1『GRRR! GRRR! GRRR!』
いろんな生活上の、そして人生に次々のしかかるいろんなことを、切り取り投げ捨て飲み込んだ歌詞。
義務はともかく、「起きる」っていうのは「重力に逆らう」、という表現がされることもありますから「重力と義務に」というのは、その両方がひっぱり合っている、という状況なのかもしれません。ちなみに、「重力が思いのほか強かったもので」というのは、遅刻の言い訳にはなりません。
「Blah」というのは、「ばかばかしいとか、たわごと」とかいう意味だそうです。
「オラ」という一人称は、どこか客観的に自分を見ている時に使う言い方ではないでしょうか。
もはや、「オラ」というくらい自分を突き放している。「ぼくはどこへ行くのでしょうか」ではなく「オラどこへ行く」なんですね。
男は普通、あんまり泣いたりしないものですから、ギターで泣くんです。
包丁で泣く人もいるでしょうし、エクセルとかパワーポイントで泣く人もいるでしょう。
つまり仕事とか、表現とか、そういうものに感情を盛り込むこともある、ということじゃないですかね。
四捨五入というのは、あんがい便利ですよ。50:50を、0.1でも超えればいいんです。
フェイスブックで同級生が出てきて、そのつながりを見たり、家族を持っている様子が惜しげもなく披瀝されているのを見て、凹むってけっこう誰にでもあるんじゃないでしょうか。実は写真や文章などの内容より、その「惜しげもなく公開しているそのテンション」に引いてしまう、って感じ。
神様は「乗り越えられない試練は与えない」んだそうですよ。
進級のテストってことは、それに受かってもまだ次があったりするわけで、なんとなくそれはわかってるんですよね、みんな。
あんまり不安だ不安だと日常的に口に出していてもいいことなんか起こりませんから、ここでこの「But!」が効いてくるんですね。
大器晩成、というのは、「大器は晩成す」という意味なんです。
大器というのものは、晩成するものであると決まっている、みたいなニュアンスでしょうか。悠久の歴史の中で、「早熟なる天才」の活躍はもちろん目立つわけですが、
そういう天才は目立つだけに活動時期が人生の前半に集中して、早くポシャってしまう。暗殺されたりとか。
最後まで残るのは、徳川家康型というか、待つタイプというか。
その意味で、「俺、大器晩成だから、今はまぁ、…よろしく!」っていうのは、あんまり言わない方がいいんじゃないか…と思う言い方なんですよ。
ほんと、作詞の和田氏も、ツイッターでは嫌な目にあってますよ。
その瞬間を目の当たりにしました。
分別のない、どうしようもない勘違いしたロックぶった青年が、和田氏に適当で、不躾な、失礼なことを言ってきてました。
ファンの方々や冷静な周囲の人に諌められ、責められ、そのユーザーはアカウントを消して逃亡したわけですが、まぁ嫌な気持ちは、残りますわな。
そんな、モロに言い合いになってもおかしくない状況でも、和田氏は見事に「ウィンク」を返してましたよ。
そのウィンクには、☆がついているほどでした。
でもこの歌詞見たりして、ああ、やはり、傷ついていたんだなぁ、と。
そして、それを咀嚼して使い続けなければならないのが、現代のツールというものだと思います。
人生は「今」の集積です。
未来などは存在しません。
「今」が積み重なった上にしか立てませんし、実はその立つ場所も、ありません。
「今」しかないんです。
なので、「いま」を生きてりゃ上々なんです。
勝ち負けで言えば、常に勝ってるんです。