「海と毒薬」の続編、的な位置づけの物語。
景気の新宿で、派手に生きる人らと、その横でひっそりと、苦しみながら生きる人々。
巻末の解説で遠丸立氏は、
おそらくこれは「知」の敏性で「鑑賞」する作品ではない。そうではなく、ながい人生を渡渉し、人間の裏と表の実情をふたつながら知悉した感性でもって「共感」する作品なのだ。
と喝破している。
その正確な理解よりも、「敏性」に「デリカシイ」とルビがふってあるあたりに、この時代の(連載は昭和51年)、空気感を少し感じることができる。
戦後の生き残り、そして社会が揺れる中で、生きるとは何か、生きないとは何か。
キリストに模された変な外国人・ガストンと、苦渋の選択をした医師。
軽薄な象徴として描かれている大学生たち。
2018年の今、多分彼らは社会の重要なポジションにいるのだろう。
何となく思い浮かぶ歌舞伎町あたりの風景が、汚れた夜の祭りとなって、印象に残る。