邦題には「見えざる敵」というサブタイトルがついている。
だけど見えざるどころか、可視化されているがゆえに困難な、解決の道。
もう、完全に「循環」している憎悪のサークル。
サウジアラビアは建国以来、アラブの主要な国であり、同時に西側諸国とのつながりの強い国。
送り込まれた4人のFBI捜査官は運よく命も助かったが、彼らが殺されても、過激派たちは「正義を行なった」としか思わないし、それはアメリカ人が中東を爆撃しても「正義を行なった」としか思わないのと同じだろう。
もはやイスラムとキリスト教、というような宗教対立だけでは収まらない問題になっていて、だけどとりあえずの流血を止めるのは、やっぱり国のトップ(王族)だったりするんだろう。
極度に高度な政治的なからみで、実際、王族は西側との戦いなど望んでいないし、だから過激派は王族をも含めて敵視している。
サウジアラビアは、「アメリカ込み」の王国(キングダム)、だといえるのかもしれない。
音楽が素晴らしい。
そしてよくある、言外に「イスラムは敵。エイリアン。殺してよし」を匂わせる多くのアメリカ映画と違い、悲しさと、果てしなさと、現時点ではどこにも解決法のない虚しさが、表現されている。
見ていて苦しくなるシーンも多いが、目を背けるのもまた罪、と思わせてくれる映画だ。
Amazonプライムで見ました。