2つ目の違いは、感情か、理性か、です。焚いとるん問題ともからみますが、ウェブは「感情寄り」のメディアです。
論理を緻密につみあげていくにはあまり向いていません。
ウェブでいちばん受けが悪いのは、お堅い学者調の文体と、論理だけを押し通したコンサルタントのレポートっぽい文体です。(p.44)
配信業者や一部の広告主は、ウェブメディアに広告を出す際、一緒にトラッキングクッキーと呼ばれるテキストデータを送っています。
トラッキングクッキーとはその名のとおり、読者を“追跡”してアクセス履歴を調べるためのツールです。
配信業者や広告主は、トラッキングクッキーを無数のウェブサイトに送り、媒体を横断した読者のアクセス履歴データを蓄積しているのです。(p.127)
マネタイズ・オア・ダイ。
紙からデジタルへの移行、やむない移行。
ネットメディアはただ享受するだけのものから、積極的にカネをとるものへと変わってる。
大手紙媒体の決断と移行、失敗と成功、まだ成果のわからないものも含めて、とてもわかりやすく解説してくれている。
若くして「東洋経済オンライン」の編集長に就任した著者・佐々木紀彦氏の、自身の経験や意見も明快に述べられていて、読者によっては実は言外に込められた「老害対策への示唆」も読み取れるのではないだろうか。
ところで「ネットに詳しい」というのは、どのようなことを言うのだろうか。
TwitterやFacebookを毎日のようにチェックしていて、 ガジェットや新型iPhoneの流出情報も逐一知っている(要する にギズモードを毎日読んでる!?)ような人のことを 「ネットに詳しい」と呼んで良いのだろうか。
そういう人々は
「ソーシャルバカ」
「SNS廃人」
または 「ソシャキチ」と呼んで差し支えない「受け身の利用者」で あって、ネットに溢れる情報をうまくつかまえて、処理し、 加工し、もう一度ネットの海に放出する、この作業に長けて いないと、ネットでマネタイズに成功することは出来ない。
もちろん、インターネットを「新しいテレビみたいなもの」と 捉えている人はまだまだ多いので、大規模な変革に国民の多くが気づくのはもう少し先になるのかも知れない。
先日、アメーバブログで稼ぐタレントさんたちの、
大体の収入が暴露されていた。
辻希美…512万1,723円
美奈子…292万5,225円
桃…277万6,338円
木下優樹菜…185万1,519円
辺見えみり…184万1,412円
小倉優子…148万1,178円
杉浦太陽…142万4,454円
鈴木奈々…117万891円
市井紗耶香…108万243円
藤本美貴…104万4,594円
紗栄子…103万4,517円
マジか…。
いや、この数字(月収)の真偽はともかくとして。
だいたい1000ビューで30円という計算になったりするようで、それ以外に、特定の商品を褒める記事を載せることで 何十万、とか。
ペニオク詐欺で騒動になったりもしたが、その構造は 「詐欺か、そうでないか」の違いだけで、今でもまったく同じだ。
広告宣伝費、という意味での収入が成立するのはタレントさんに集客能力があるからで、意味もないのに稼いでいるのではない。
職種として特殊なので、単なる一般人が無意味に羨ましがったりネタんだりするのはカロリーとカルシウムの無駄使いなのでやめよう。 マグロ漁に命をかけている漁師さんがマグロ数匹で何千万、 という売り上げを出すのを、むやみにうらやましがっても自分には再現できないからね。
なぜかそれと同じなのに、芸能人だけがねたまれるのは おかしな話だ。
新聞社や出版社などがウェブメディアに切り替え、 それに課金制度を導入して利益を上げようとする時、 紙媒体時代の悪弊をどれくらい断ち切れるか、 どれくらい若手に任せられるかで運命は決まる、 と著者は言う。
確かに、トライ&エラー、スクラップ&ビルドを過去の何十倍のスピードで繰り返すことが可能になったウェブの 世界だから、旧弊にこだわっていては負けるに決まっている。
たいてい、「ネット中毒のやつらは…」と、 インターネット全体を敵視するような発現をする人は、 プログラムが書けるなんてとんでもない、メール転送すらおぼつかないような「ネット原始人」が多い。
その上、業務上、売り上げに繋がるんだからそれは技術として 必須なはずなのに、「もう俺は歳だからな…」と、パソコンに真剣に取り組もうとしない。
著者は豪快に、
率直にいって、40代のメディア人はこれからかなり厳しく なると思います。(p.196)
とあえて言い切っている。
40代ですら、ですよ?? そして50代の管理職は、メディアにおける新世界を切り盛りする実戦部隊を、40代を通り越した30代に任せるべきだと。
「ゆとり世代」が企業で問題視されることがあると言うが、それよりやっかいなのはやっぱり「バブル世代」だ。
ぜんぜん違う業種の人にも、 これは参考になる本だと思う。 なぜなら、やってることは違えど、作るものは違えど、人と繋がるには必ずウェブを介するからだ。
帯にはさらっと、「メディア・サバイバル」と書いてある。
まさにMONETIZE OR DIE。
血みどろの生存競争は、どちらにしても、避けられない。
著者と、田端信太郎氏の東洋経済オンライン上での対談。
小見出しのつけ方が、やっぱり上手い。
http://toyokeizai.net/articles/-/15695