この夏は、「ゴジラの夏」でした。
それはこの2016年に公開された「シン・ゴジラ」の話題から、そういえばゴジラ映画を、一作も見たことがない、全部で何作あるのかも知らない、という自問自答から始まったのでした。
なぜ、新しいゴジラに、否定的な人がいるのか。
「ゴジラ的なるモノ」とは一体なんなのか。
それを知るべく、1954年から、順に見ていきました。
設定として、戦後まもない頃に構想され、生なましさのまだ残る時代。
戦争(核)の落とし子として、再度日本を恐怖に陥れたゴジラ(初代)。
それは、日本はもう、怪獣が壊すほどの復興を果たしているのだ、という意地の表明であったのかもしれません。
その後、ヒーローもの・テレビの台頭により、スクリーンで暴れるゴジラに、色濃くその影響がではじめる時代。
政治色やテーマが、大幅にブレる時代も経験します。
動員人数が100万人を切ってしまい打ち切り終息した後も、復活を果たすのは「ゴジラっていいよね」というファンが根強く育った(あるいは制作側の世代交代が起こった)ことによるものだったのでしょうか。
2000年代を迎えて、特撮技術、CG合成の発達具合は目覚しいものがあるものの、やはりストーリーの部分では、苦労しているなぁ、という感想がこぼれます。
それは、「ゴジラがいる世界」を描くが故の、「あっ!ゴジラだ!」から始まる既視感。
既視感がある以上、人間側の設定によるドラマを描くことになり、「先輩の死を乗り越える」だの「死なないで!」だの、極小の感情劇が盛り込めるだけ盛り込まれてしまい、「ゴジラの意義ほぼゼロ」という作品に必然的になっていく宿命を負っていたのでした。
第三作キングコング対ゴジラで1255万人の動員を数えたゴジラは、第十五作「メカゴジラの逆襲」で97万人にまで数字を下げてしまい、いったん終了。
復活すると300万人越えを連発したものの、2004年の「ゴジラ FINAL WARS」では100万人を維持するのがやっと。で、12年を経ての新作(「シン・ゴジラ」)。
ゴジラ乱暴箇条書き
今回、ゴジラ全作品を見て、ものすごく乱暴に思ったことを手短に、箇条書きにしておきます(追加の可能性あり←思い出したら)。
・第一作以外の、シナリオの苦心惨憺ぶり。
・ゴジラは一時、着ぐるみトカゲのおっさんだった。
・セリフが浮世離れしている。
・超科学至上主義。
・モスラが強すぎる。
・メカゴジラは役に立たない。
・というか兵器をゴジラ型に作るな。被害が二倍になる。
・意外な役で長澤まさみが出ている。
2016年に思うこと。
改めて思うのは、「これらすべてのゴジラシリーズを踏まえた新ゴジラ」を新たに作ることなど不可能だった、ということ。
作るなら「ゴジラがいない世界(つまり初作以前の世界観」)にするしかない。
ゴジラシリーズ全作品を観た者なら、そう結論づけることになるでしょう。
おそらく、「シン・ゴジラ」の庵野監督も、そういう結論に至ったのでしょう。
「なんだ!あれは!」の世界。
「あっ!ゴジラだ!」ではない世界。
そうしないと、「恐怖」が表現できない。
で、全ゴジラシリーズに希薄で、描きようがない苦労が見えた「政治的決断」という場面。
指揮系統の不明なまま、地域が壊滅するような奇抜な作戦を次々に、なんと「民間人主導」でバカスカやってきた自衛隊でしたがw、まっとうに「歩く災害」たるゴジラに対処しようとしたら、「シン・ゴジラ」のように対策を練る政府、を描くのが至極まっとうだと思います。
だから「シン・ゴジラ」が描いていた政府や官房のあの「会議劇」は、ゴジラ対策をする上で、ゴジラを語る上で、欠くことのできないリアリティだったのです。
そういう「会議」「政治」「日本ぽさ」を揶揄し、批判している人も少なからずおられるようですが、全く的を得ない、トンチンカンな意見と言わざるを得ません。
どうせ(だって個体が一匹かどうかもわからないんだし)完全なる退治は不可能なスーパーモンスターですから、結局は「で、人間はどうするんだい?」しかないんです。
どんな被害が出ようが、ヒロインが死ぬとかヒーローが活躍するとかどうでもいい。
実際は、「で?人間はまず、行政が対処するんだろ?」から始まるんです。
仮想敵国をオーバーラップさせながら見る政治劇・治安出動・民間の団結など、フィクションだとは言いながらも「実際に起こったら自分はどの立場だ?逃げるだけか?」とさえ思わせてくれる、秀逸な現実味が「シン・ゴジラ」にはありました。
ゴジラシリーズ早見表
タイトル | 公開年 | 動員数 | 興行収入 |
第1作 | ゴジラ | 1954年 | 961万人 | 1.6億円 |
第2作 | ゴジラの逆襲 | 1955年 | 834万人 | 1.7億円 |
第3作 | キングコング対ゴジラ | 1962年 | 1255万人 | 4.3億円 |
第4作 | モスラ対ゴジラ | 1964年 | 722万人 | 3.1億円 |
第5作 | 三大怪獣 地球最大の決戦 | 1964年 | 541万人 | 3.9億円 |
第6作 | 怪獣大戦争 | 1965年 | 513万人 | 4.1億円 |
第7作 | ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘 | 1966年 | 421万人 | 3.3億円 |
第8作 | 怪獣島の決戦 ゴジラの息子 | 1967年 | 309万人 | 2.6億円 |
第9作 | 怪獣総進撃 | 1968年 | 258万人 | 2.3億円 |
第10作 | ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃 | 1969年 | 148万人 | 2.6億円 |
タイトル | 公開年 | 動員数 | 興行収入 |
第11作 | ゴジラ対ヘドラ | 1971年 | 174万人 | 3億円 |
第12作 | 地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン | 1972年 | 178万人 | 3.2億円 |
第13作 | ゴジラ対メガロ | 1973年 | 98万人 | 2.2億円 |
第14作 | ゴジラ対メカゴジラ | 1974年 | 133万人 | 3.7億円 |
第15作 | メカゴジラの逆襲 | 1975年 | 97万人 | 3.3億円 |
第16作 | ゴジラ | 1984年 | 320万人 | 17億円 |
第17作 | ゴジラvsビオランテ | 1989年 | 200万人 | 10.4億円 |
第18作 | ゴジラvsキングギドラ | 1991年 | 270万人 | 14.5億円 |
第19作 | ゴジラvsモスラ | 1992年 | 420万人 | 22.2億円 |
第20作 | ゴジラvsメカゴジラ | 1993年 | 380万人 | 18.7億円 |
第21作 | ゴジラvsスペースゴジラ | 1994年 | 340万人 | 16.5億円 |
第22作 | ゴジラvsデストロイア | 1995年 | 400万人 | 20億円 |
第23作 | ゴジラ2000 ミレニアム | 1999年 | 200万人 | 16.5億円 |
第24作 | ゴジラ×メガギラス | 2000年 | 135万人 | 12億円 |
第25作 | ゴジラ・モスラ・キングギドラ | 2001年 | 240万人 | 27.1億円 |
第26作 | ゴジラ×メカゴジラ | 2002年 | 170万人 | 19.1億円 |
第27作 | ゴジラ×モスラ×メカゴジラ | 2003年 | 110万人 | 13億円 |
第28作 | ゴジラ FINAL WARS | 2004年 | 100万人 | 12.6億円 |
第29作 | シン・ゴジラ | 2016年 | 230万人↑ | 33.8億 ↑ |
第30作 | GODZILLA | 2017年 | / | / |
アメリカ版
GODZILLA | 1998年 | 51億円 | 360万人 |
GODZILLA ゴジラ | 2014年 | 32億円 | 218万人 |
2017年にはまた、新しいゴジラが公開されるそうですね。
これがまた「着ぐるみの正義のトカゲのおっさん、ミニラもいるよ」みたいな感じだったら面白いなあwwwwww